気づきのキャリア(80)強いチームは “オフサイト” で作る! 大手もベンチャーも注目の「オフサイト合宿」の効果
Studay hacker に寄稿しました。
学生時代、ゼミやサークルの仲間が研修や1泊旅行のあとすごく仲良くなった。苦しい合宿のあと、チームの一体感が増して、試合に強くなった。そんな経験はありませんか?
チームで旅行をしたり、合宿を行ったりすることは、強いチームを作るために非常に良い方法。これは学生だけでなく、実は職場にも大いに当てはまることです。
近年は、大手・ベンチャー含む様々な企業で、オフサイト合宿やキャンプなどを行うことが流行っています。例えばサイバーエジェントは、「あした会議」と言う名前の合宿を開き経営陣らが新規事業を審査していますし、楽天も役員合宿を毎年行っているのだそう。
職場を離れ、日頃の忙しい業務から距離を置くことで、社内での定例会議では解決できないような中長期の課題をじっくり話し合うことに時間を費やしたり、経営陣やマネジメント層が経営課題に向けて結束力を高めたりすることができます。また経営陣に限らず一般の社員にとっても、合宿によって得られるものは大きく、社内やチーム内になかなか解決できない課題があるときには、合宿がよく効くのです。
では、企業にとってオフサイト(転地療法)合宿を行うメリットとは何か、なぜ合宿はチームビルディング効果が高いのか、見てみましょう。
相手のことをよく識ることができる
たとえ1泊であっても、合宿で過ごす時間は日頃会社で過ごす時間よりも格段に長く、また濃密になります。そのような時間を同僚と一緒に過ごすと、仕事では見ることのできない相手の意外な一面が発見できます。仲間がどんな趣向や価値観、興味を持っているのか、驚きと気づきを得ることになるのです。
合宿の場では、自分の「強み」を自己紹介形式で説明したり、この組織で何をやりたいと思っているのか、人生で何を成し遂げたいかなどを共有すると良いでしょう。そうすることで、生活や人生、仕事に対する考え方をお互いに知ることができます。
相互理解を深めることは、信頼関係を構築するきっかけになります。一度関係ができれば、そのあと会社に戻ってからも、メンバー同士でスムーズにコミュニケーションが取れたり、お互いにサポートし合えたりするようになりますよ。
このように合宿では、単なる飲み会や社内ミーティングのような短時間の接触では得られないメリットがあるのです。
チームの目的を考える機会になる
合宿の場で、時間をかけて目標を確認すると、チームとしての一体感が出ます。それによって仕事へのモチベーションも上がることでしょう。
日頃は、誰もが目の前の業務で手一杯になりがち。しかし、合宿では日常の業務を離れて「チームはどうあるべきか」といった高い視点から意見を交わすことができるようになります。チームの目的や運営に関するメンバーそれぞれの意見や、これからどんな目標に向けてどのように進んでいったら良いのかを、じっくり話し合えるでしょう。日頃の不安を共有したり、疑問点を解消する場にもなりますね。
合宿でじっくり話し合い、メンバー全員がチームの進むべき方向性について納得すれば、目的達成のために一人一人が主体的に動ける組織へと変化します。メンバー個々にリーダーシップが備わることで、互いに信頼し合いながら仕事を進められる関係性を築くことができるのです。
価値観の擦り合せができる
組織には組織として守るべき価値観があり、メンバー個人には当然その人なりの考え方があります。これらの価値観のすり合わせができていなければ、チームの歯車が噛みあうことはありません。
合宿では、個人の価値観を共有することに加えて、チームとしての方向性を全員で確認することになります。それはすなわち、個人とチームの価値観を調整し、効率的な組織プレーができるよう全体最適化することでもあるのです。
例えばサッカーなどのチームスポーツをイメージしてみましょう。試合だけ、もしくは個人練習だけをいくら繰り返しても、強いチームをつくることはできませんよね。フォワードが守りも重視するチームを目指すなら、「フォワードは点を取るだけ」という個人的な考えは改める必要がありますし、反対にディフェンスが攻撃参加する積極的なチームを目指すなら、「守るだけでいい」と考えている守備担当選手もシュート練習をしないといけません。
会社にいると、つい顧客営業などの“対外試合”と、一人で仕事をする“個人練習”に終始しがちです。合宿で、組織やグループ全体の目的と自分の役割を振り返り、団結力と“組織プレー”の大切さを肌で感じることは、とても大切なことなのです。
体験を共有することができる
合宿では、日頃できない体験が共有できるのも魅力ですね。場所を変えると開放的な気持ちになり、特別な体験を通して普段の何倍もいいコミュニケーションがとれます。
キャンプ、BBQや焚き火など、単純なことで構いません。人狼ゲームやジェンガなどのテーブルゲームも、大勢でやると盛り上がりますし、互いの性格がわかって面白いですよ。
合宿では、学びだけでなく、体験を通じた笑いと感動を味わうことになります。これにより参加者全員が、昨日までとは違う自分に出逢うことができ、また、これまで知らなかったメンバーの姿に触れることになり、一体感が生まれます。
このように『一宿一飯の仲』になり、同じ体験を共有したメンバー同士は、お互いを理解し、本音を言い合うことができる関係となるのです。合宿の場で築いたこの関係が、会社に戻ってからの信頼関係に良い影響を及ぼさないはずはありません。
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皆さんも、チーム運営に困った時は、まず、合宿を提案してみませんか。
チームで大切なのは、そこにいる「人」を最強のチームにする「心」づくりです。合宿を終えた後のメンンバーの顔は明らかに違いますよ!
(参考)
博報堂ブランドデザイン著(2010),『だから最強チームは「キャンプ」を使う。 ──「創造性」と「働きがい」を生み出すビジネス合宿術』,インプレスジャパン.
伊藤豊著(2014),『たった一晩で「最強チーム」に変わる奇跡の合宿 ― 悩めるリーダー必読!』,現代書林.
森田元著,田中宏明著,佐藤俊行著,松山雅樹監修(2009),『戦略キャンプ―2泊3日で最強の戦略と実行チームをつくる』,ダイヤモンド社.