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気づきのキャリア(89)部下をやる気にさせる「ワクワクエンジン」を起動させる方法とは?


『部下が自分で考えて動き出す 上司のすごいひと言』(板越正彦著、かんき出版)は、部下が自分で考えて動き出すようになる「あること」について書かれた本なのだそうです。インテル在職中の2012年にビジネスコーチ社でコーチングの資格を取得し、ワークショップやエグゼクティブコーチングで成果を上げてきた著者が、そうした実績のなかから導き出した考え方。

その「あること」とは、部下がやる気になる「ワクワクエンジン」を探し、会社の目標とすり合わせることです。

ワクワクエンジンとは、何かワクワクしたときにかかる心のエンジンです。やる気やモチベーションの源であり、このエンジンがかかったときに人は真の力を発揮します。

私たちは、つい、会社のノルマや上司の期待を部下に押し付けてしまいがちです。

それでは部下は自分で動き出さないし、常に管理・監視を続けなくてはなりません。モチベーションも上がらないし、優秀な人材を採用しても急に辞めてしまうでしょう。

その原因は、ワクワクエンジンがまだかかっていないからです。

(「序章 部下が自分で考えて動き出すたった1つの『エンジン』がある」より)

いうまでもなく、著者の造語であるワクワクエンジンとは、なにかワクワクしたときにかかる「心のエンジン」のこと。やる気やモチベーションの源であり、そのエンジンがかかったときに人は、真の力を発揮するというのです。

ちなみにワクワクエンジンをかけるには、「その人がどこにワクワクするか」という急所である「ワクワクポイント」を知る必要があるといいます。著者の場合は、部下がワクワクエンジンをかけられるようになるために、部下のワクワクポイント(価値観・こだわり)を聞くように心がけたそうです。

だとすれば、部下に達成してほしい目標を、うまく部下のワクワクエンジンとつなげて示せば、部下は自分で考えて動き出し、目標に向かって進んでくれるはず。事実、著者自身も、「上司の役目は部下のワクワクエンジンを探し、うまく始動させること」だと気付いてから、すべてがうまく回りはじめたのだといいます。

そして、そのような状況を実現するために重要な意味を持つのが、上司からの「ひと言」だと著者は主張します。

上司にはカリスマ的なリーダーシップも、部下への影響力も必要ありません。たった一言で部下の気持ちに寄り添い、ワクワクエンジンをかけるだけでいいのです。

目の前の業務で手一杯になり、部下の指導までなかなか手が回らない皆さんこそ、これから紹介する「質問&リスニング」を実践してみてください。

きっと、部下は自分で考えて動きだすようになり、上司のあなたは管理も監視もしなくてよくなることでしょう。

(「序章 部下が自分で考えて動き出すたった1つの『エンジン』がある」より)

そこで本書では、入社3年目の田中くんという20代営業マン(法人営業)のケースを用い、「ひと言」のかけ方を紹介しているわけです。田中くんは、与えられた仕事はきっちりこなすし、上司の指示もきちんと聞く、どこの職場にもいるような真面目なタイプ。しかし、誰とでも合わせられる器用さがある一方、深い関係を築くのは苦手だといいます。そんな彼のワクワクエンジンをどうかけたらいいのか、第1章「部下のやる気のスイッチを入れる6つのステップ」を見てみましょう。

まずは、部下との距離感を縮める

部下との信頼関係が築けていないうちに、「ワクワクポイントはどこか?」などと真顔で聞いたとしても、部下からはぼんやりとした答えしか返ってこないはず。そこで無理に追求せず、「気楽に答えられるひと言」で、まず部下との距離を縮めることが大切。そのスタートラインとして紹介されているのが、「心を開いてリラックスさせるひと言」をかけること。

上司「最近、一番楽しかったことは何かな?」

田中くん「最近ですか? 大学時代の友だちの結婚式の二次会で盛り上がったことかなあ」

上司「それはいいね。何が楽しかったの?(1)」

田中くん「新郎と一緒に、ひそかに三代目J Soul Brothersのダンスの練習をみんなでしていて、余興でやったんです。新郎はダンスが下手で、みんなと動きがずれていたから、会場は爆笑でしたね。新婦にもすごく喜ばれて、あんなに楽しかった二次会は初めてです」

上司「それは盛り上がっただろうね。どれぐらい練習したの?(2)」

田中くん「1カ月前から、土日にみんなで集まって振りを覚えて、練習をしたんです。みんなダンスはしたことなかったから、覚えるまで大変でした」

上司「1カ月も練習するなんてすごいね。いい仲間だね」

(34ページより)

この会話には、2つのポイントがあるそうです。ひとつひとつを見てみましょう。

最近楽しかったことやうれしかったことを聞く

喜怒哀楽につながる質問は相手も答えやすく、心を開きやすくなるといいます。特に楽しかったことやうれしかったことを具体的に思い出してもらうと、それだけで部下の内部にワクワクする気持ちが蘇ってくるのだとか。理想は、「その楽しい気持ちを仕事で再現するにはどうすればいいのか」というところに話を持っていくこと。

しかし質問&リスニングに慣れないうちは、無理やり仕事の話に結びつけていると思われてしまう可能性も。それでは部下もワクワクできないので、楽しい体験を思い出してもらうだけで十分だといいます。

自分が知らないことでも興味を持って聞く

部下が自分の知らないことを話題にしたり、自分にとって興味のない分野について話したとしても、「なにそれ?」というように無関心にならないことが大切。上記の例であれば、「三代目J Soul Brothersって、どんなダンスをしているの?」など、わからないことを聞いてもかまわないそうです。話に興味があるということが伝われば、より熱心に話してくれるわけです。

このように、他愛ない会話から、田中くんのワクワクポイントにつながる情報がかなり拾えるということ。たとえば「みんな」という言葉を繰り返していることからは、「人と協力してなにかをするのが好きなのだろう」「人に喜んでもらえるとやりがいを感じるのだろう」などと推測できるわけです。(34ページより)

さて、著者が次に取り上げている「価値観やポリシーを知るためのひと言」も、記憶にとどめておきたいポイントです。

上司「田中くんはなんのために仕事をするのかな?」

田中くん「うーん、僕はプライベートを充実させるためにお金が必要だから働いている、という感じです」

上司「そうなんだ。仕事は仕事で割り切っているんだね」

田中くん「ぶっちゃけ、あんまり楽しくないですから」

上司「いまの仕事は楽しめないんだね。なかでも、やりたくないことはなんだろう?(1)」

田中くん「それはやっぱり、ノルマ達成です。ノルマに常に追われてる感があると、ストレスがハンパないっていうか。ノルマがあると、クライアントに強引に勧めないといけないから、相手に悪いなっていう気分になるんです」

上司「それはもしかして、ノルマ自体がきついというより、クライアントに不誠実なことをしなくてはならないことに対して、良心が傷んでいるのかな?(2)」

田中くん「そうなんです。それで契約が取れても、モヤモヤした気分になっちゃって」

上司「良心が痛まないでノルマを達成する方法を考えられるといいね(3)」

やりたくないことの裏側のポリシーを探る

「なんのために仕事をするの?」と聞くよりも、部下の嫌いなこと、苦手なことを聞き出すほうが有効。そして行動してもらうヒントを探すには、「なぜ、それをやりたくないのか」というような質問を投げかけていくと、やりたくないことの裏側に部下のポリシーや価値観が見えてくるというわけです。

説教は厳禁

多くの上司はこういう状況で、「辛いのはわかるけど、みんながんばっているんだよ」と自分の意見を口にしてしまいがち。しかし、そうなると部下は心も口も閉ざしてしまうもの。部下の気持ちを受け止めるだけでいいので、最初は自分の意見を挟まないようにすべきだというのです。

同意のリスニングで関係を深める

ネガティブなことを聞き出すときは、ポジティブな話を聞き出すときより、慎重に進めることが大事。共感や承認を示すリスニングを合間に挟み、「私はあなたの話を受け止めています」という姿勢を示すことがポイントだということです。

質問&リスニングの効果

自分の弱いところを人に見せると、その人との距離は一気に縮まるもの。だから部下は苦手なこと、嫌いなことを吐き出せたら、上司に親近感を抱くといいます。また、部下が苦手なことを克服できれば、いずれ自分で動けるようになるとか。そのためにも、まずは苦手ポイントを聞き出すべきだというのです。(32ページより)

部下に自分で考えて動く習慣を身につけさせることは、なかなか難しいもの。しかし上司にとってそれは、いつか乗り越えなければならないハードルでもあります。そこで、状況を改善するために本書を参考にしてみてはいかがでしょうか?

印南敦史

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