気づきのキャリア(86)意図のある世間話が心を開く。AI時代に必要なコミュニケーションの “センス”
みなさんは、世間話が得意ですか?
もし「意味のない世間話はすべきではない」と考えたり、口下手だからという理由で世間話を避けているのであれば、それはとてももったいないことです。
「一生懸命商品の売り込みをしているのに、なぜかお客様に選んでもらえない」、「部下や後輩がなかなか指示通りに仕事をしてくれない」など、こんなに頑張っているのになぜか結果がついてこない、そんな悩みを抱えるビジネスパーソンの方、もしかして、会話を開始すると同時に本題に入っていませんか?
そんなときは、本題に入る前にちょっとした世間話をしてみるのはどうでしょう。世間話をすることで、まずあなたの人柄を知ってもらうのです。
今回は誰にでもできる、世間話のコツを紹介します。
世間話はビジネスに有効である
なにげない会話のキャッチボールである世間話は、無駄ではなく、コミュニケーションツールとして対人関係を円滑にする効果があります。たとえば、打ち合わせや会議で、すぐに本題に入ったり、強引に話を進めたりすると、ギクシャクした雰囲気になってしまいますが、「意図的な世間話」を挟むことで、より円滑で効果的な話し合いをすることができます。
また、どんなに能力があっても「とっつきにくい人」と思われてしまっては、周囲の信頼を得ることは難しいでしょう。「たかが世間話」と侮らないでくださいね。なにげない会話のやりとりから、「あの人はコミュニケーション能力が高い」と判断され、高い評価を受けることもあるのです。営業職に限らず、全ての職種において「意図的な世間話」は身につけておきたいスキルのひとつですね。
それでは、「意図的な世間話」をするには、どんなことから始めればよいのでしょうか。「意図的な世間話」と聞くと、とても難易度が高いテクニックのような気がしますが、実は、話すべき内容をあらかじめ準備し、ストーリーを組み立て、意識的に話すだけで、誰とでも気軽に世間話をすることができるのです。
「世間話は事前準備をすれば誰でもできるものです。例えば、打ち合わせで会う相手を想定し、「何を話すか」「テーマは何にするか」などを考えて、話すべき内容を準備することが重要です。」
(引用元:高城幸司著(2012),『仕事の9割は世間話』,日本経済新聞出版社.)
それでは、実際に世間話のコツをお伝えしましょう。
世間話の準備をする
まず、世間話での話題を大まかに想定し、情報を入手することから始めます。相手の業界についてや、ゴルフや車のようなプライベートな趣味にまつわることでもよいでしょう。新聞や雑誌、インターネットのニューストピックスやSNS上で話題になっている情報を大いに活用し、資料やプレゼンテーションの準備をするように、世間話の準備をしましょう。
また、相手が関心を持つであろうことや、自分が面白いと思ったことを、日々メモをする習慣をつけておけば、漫才のネタ帳ならぬ、世間話ネタ帳ができあがります。Aさんにはゴルフネタ、Bさんには登山ネタ、Cさんには……というように「相手に合ったネタ」を準備することで、今までよりも気軽に世間話を始めることができますよ。
このように準備をすることで、初対面の人とでもスムーズに世間話ができると思います。そして今まで感じていた、名刺交換のあとの少し気まずい雰囲気を「心地よい瞬間」に変えることができたら、人づきあいに対する苦手意識も薄らぐのではないでしょうか。
質問をする
質問を投げかけるのもひとつの手です。その業界やニュースで話題になっていることを聞くのもよいですし、「何かスポーツをされてましたか?」、「釣りがお好きだとお聞きしましたが、どんな魚を釣るのですか?」など、相手が熱中していることを質問してもよいでしょう。仕事に関係のないことでも、こだわりがあることについては意外と熱心に語ってくれることが多いのです。誰でも思い当たることがあるような「最近、何か面白いことはありましたか?」、「困っていることはないですか?」といった質問も、話のきっかけにもってこいです。
重要なのは「いかに相手に話してもらうか」ということであって、「いかに自分の話で楽しませるか」ではありません。「面白い話」をするよりも、相手が話しやすい話題から入りましょう。
リアクションをオーバーに
相手が話しているときは、「なるほど」、「えー! そうなんですか」、「それは知らなかった」など、話を聞きながら少し大げさなリアクションを取りましょう。そして相づちや合いの手、笑顔や身振り手振りで、相手の話をどんどん引き出してください。
「それはこういうことですか」、「キーワードは~ですね」など、言い換えたり要約したりすることもよいでしょう。相手は「私の話を理解してくれた」と感じ、あなたの好感度がぐっと上がるはずですよ。また、会話の中で「今○○さんがおっしゃったように」と、相手の名前を呼ぶことも効果的です。
ノーリアクションは「既読スルー」と同じです。ビジネスに直接関係のない、子供の話やスポーツの話など、どんな話題であっても興味を持ち、素直に感心することが大切です。なにが無駄で、なにが無駄じゃなかったのか、ということは、あとになってみないければわからないのですから。
世間話は短くても良い
世間話の目的は、相手との距離を縮め、空気を和らげることにあリます。ですから、話の上手下手や、トーク術の有無も気にする必要はありません。そうはいっても、やはり雑談はどうも苦手だというビジネスパーソンの方もいると思います。
そこで、「10秒雑談」の習慣を身につけることをおすすめします。会社のエレベーターやエントランスで知り合いに会ったときなど、明るい挨拶のあとに、何か一言だけつけ加えてみましょう。「おはようございます! 今朝から急に寒くなりましたね」や「お疲れさまです! 外はまだ雨が降っていますか?」などです。「10秒雑談」のあと、すぐに相手と別れてもかまいません。
そもそも、1回の世間話で親密度を上げる必要はありません。黙っていることで、相手も感じている「気まずさ」や「居心地の悪さ」を解消できればそれでOKなのです。
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グローバル社会が叫ばれる中、外国語やMBAなどの資格取得のために社会人講座を受講する、志の高いビジネスパーソンが増えています。その一方で、世間話は資格のようにわかりやすいスキルではありませんが、組織での人望や評価はコミュニケーションスキルによるところが多いのです。
「各界で活躍する人の大半は「世間話が重要」と断言してくれました。しかもかなり強く(年齢はあまり関係ないようです)。例えば、20代中盤で会社を経営するDさんは「世間話でしか相手を見抜けない」と答えてくれました。」
(引用元:同上)
世間話には「人柄」が大きく出ます。立場が上席になるほど、そして多くの経営者は、世間話をすることで人物評価をしたり、信頼に足るのか見ているのです。
失敗を恐れず、たくさんの場数を踏むことで、どんな受け答えをすれば相手が喜んでくれるのか、相手との距離感はどう測るのかなど、自分らしい世間話のルールができていきます。
モノが売れないAI時代だからこそ、世間話をすることで相手の心を開き、信頼関係を築きながら情報収集をし、今後のビジネスに活かしていきましょう!
(参考)
高城幸司著(2012),『仕事の9割は世間話』,日本経済新聞出版社.
齋藤孝著(2017),『会話がはずむ雑談力』,ダイヤモンド社.
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