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気づきのキャリア(58)元インテル役員が語る「インテルで学んだグローバルリーダーシップ論」 第2回:インテルで出会ったリーダーシップ・ロールモデル。


ビジネスノマド・ジャーナルに寄稿しました。

第2回は、インテルのリーダー達の成功哲学。「インテルで出会ったリーダーシップ・ロールモデル」です。

これまで20年以上いたインテルの中でも、グローバルリーダーのトップになるのにキャリア上なにが大切なのか、自分で観察したり、トップエグゼクティブ一人一人にその成功哲学を聞いてみたことがあります。その中でも、特になるほどと参考になったものを思い出してみたいと思います。

アンディ・グローブ:シリコンバレーの巨人の強烈な執着心と自己規律

インテル3番目の社員であり、そのCEOの任期中、インテルの時価総額を24倍以上に押し上げたというシリコンバレーの巨人、アンディ・グローブ。よく知られているとおり、アンディは人にも自分にもすごく激しいリーダーでした(前回)。競争への激しい執着心とDiscipline(自己規律)のロールモデルです。

自己規律の例としては、エレベーターを使わない方が体に良いということで、1階のカフェテリアから、お盆の上に乗せたランチを両手に持って、4階のオフィスまで階段をゆっくりと登っているのを何度も見ました。それを見ても誰も止めませんでした。

執着心という点では、ある時CFOに質問があった時、話しながらCFOの後をずっとついて行きます、そして、彼がトイレに入ってもドアの前で話し続けているのです。トイレから出て、手を洗っても横でまだ話し続け、ついには彼が次に会議の部屋に入る時に、さすがに会話を終わらそうとドアを閉じようとすると、その間に顔を挟みながら言った言葉が「Are you disappearing?(あなたは逃げようとしているのか?)」。見ていて強烈でしたね。

アンディ・グローブは常に未来へのはっきりとしたビジョン(目標と方向性)を語りながら、社員を鼓舞しました。不況で、一時的に売り上げが悪くなった時に、「Recession always ends(不況には必ず終わりがある)」と言って、鉄鋼業界の歴史とグラフを見せ、戻った時の準備を我々はすぐにしなければいけないと話していたのが印象的です。

インテルの世界中の営業・マーケティング部隊を集めた年初の営業会議では、最後にQ&Aというアンディへの質問ができるコーナーがあります。その時、質問コーナーのマイクの前で並んで順番を待っている時の緊張感は半端ありません。一度、みんながアンディに記念に質問しようと押し寄せたときに、彼が「I expect intelligent question.(ちゃんとした質問だろうな)」と静かに言ったとたんに、スーッと人がいなくなりました。つまらないジョークのような質問をしようとして集まった人が怖気付いて席に戻ったのです。

"Only The Paranoid Survive(直訳すると「偏執狂こそが生き残る」、書籍の日本語名は「インテル戦略転換」)"という恐ろしい名前の本も書いています。ある女性(元CIOで、今はデータセンターのVP)が彼とワン・オン・ワン(1対1面談)をした時に、「you are not mad enough」(まだ気が狂うほどやっていない)と真顔で言われたそうです。

ブライアン・クラーザーニッチ:現在のインテルCEOはメンターを有効活用

現在のCEOである、クラーザーニッチは工場の生産性向上で非常に成果をあげたことで社内では有名でした。彼がエンジニアのときに、工場長になりたいという目標で、いろいろメンターにアドバイスをもらったそうです。中には、「君には工場長は無理だよ(you can never make it, factory manager.)」と言う人もいました。しかし、彼は工場長になることができました。実は、インテルの現会長の、アンディ・ブライアント(Andy Bryant)にも「CFOは無理だよ( you can never make it CFO)」と言われていたそうです。

クラーザーニッチですら上記のように言われてきたのです、彼は「だから君には無理だよという声が、回りから聞こえてもあきらめるな」と新入社員に話していました。もう一つ、彼は工場長になる時、「あなたの弱点は、戦略的思考の欠如だね( Your weakness is strategic thinking)」といわれてから、時間をかけて人の意見を聞くようにしたそうです。他の候補者のジョークが不適切なのを見て、反面教師として、「人のふり見てわがふり直せ」になったとも言っています。

こういったことから、彼は「メンターを持て(良い人でも反面教師でも)、5年計画をもて、自分の希望を発信しろ、間違いを認めろ、自信を示せ、部下をコーチしろ。」とキャリアについての考えを説明していました。

インテルの女性リーダー:「テフロン加工のように」「火を消すのを愛しなさい」

インテルでは、女性の立派なリーダーも多いです。インテル史上初の女性社長であったルネー・ジェームズは、女性がリーダーとして必要なことは何かと聞かれたときに、「テフロン加工のように、批判を受けても気にしないことだ」と話していました(※例えば、テフロン政治家とは、厚顔であつかましい政治家のことを指します)。

女性のリーダーは特に自分の責任でないことや、不可能なことを悩んでしまって時間を無駄にしてしまう傾向があるそうです。非常に厳しいアンディ・グローブの社長補佐として4年間働いた彼女ならではのノウハウです。

もう一人、アップルへの営業実績が認められて昇進した元CMO(Chief Marketing Offcier)の女性のポリシーは、「仕事を愛し、課題解決を楽しみなさい( Love your job, enjoy issues to resolve)」でした。大きな問題や、事件をみずから進んで解決していくことで、信頼を得て、もっと大きなタスクを任せられそうだと周りの期待値を上げることができます。だから火事を消すのを愛しましょう、誰かが消さないといけない、それなら手をあげて楽しむことで、あなたの実力と評判が上がるのです。

その他のリーダー:前CEOのポール・オッテリーニ

それ以外にも、前CEOのポール・オッテリーニはもともとファナインスのシニアポジションでしたが、マーケティング系のポジションに横移動しました。自分の元々のスキルや経験を十分に活かせない他部署への異動を不思議に感じ、なぜそのような部署移動をしたのかと聞いてみると、「もちろんファイナンスのもっと上のポジションも目標にできた。ラテラル(横移動)は給与や条件が上がるわけでもないし、未知への挑戦のリスクもあるのだが、この経験によってすごく自分のキャリアの幅を広げることができた」と言っていました。

こうした経験を自ら買って出る姿勢に感銘を受けて、私もこのアドバイスを参考にしてオペレーション部門から、新規事業開発へと異動しました。リスクがあるものの、結果としては自分の仕事の幅を広げる、大きなリターンのある経験になりました。

さらに、ポール・オッテリーニは引き際も見事でした。インテルはiPhoneのプロセッサの受注を取れるチャンスがあったのにそれを逃しました、その理由として、スマートフォン市場がこれほど大きくなると予測できなかった。それでも、CEOに留まることはできたにもかかわらず、新しい技術は若い世代にしかわからないと言って、次に譲ったのです。

彼のポリシーは「好奇心を絶やすな。デフェンスをするな。攻めろ。」でした。

インテル歴代役員たちの珠玉のキャリア名言

これまで挙げてきた歴代CEOの他にも、多様性に富むインテルの役員たちのキャリアに関する言葉をご紹介します。

▼「発言しろ(Speak up)、そして学び続けろ(Continue to learn)」:

こちらは、CEO候補だった元CSO兼CMO(Chief Sales and Mktg officer)の言葉です。

▼「すべてをやることはできない。大事な1つか2つのことにのみ集中するべきだ、その他は重要ではない(Focus 1-2 and ignore everything else.)」「リスクをとれ。上司と意見が違ったとしても自分が正しいと思うことをしろ。(Risk taking: Do what you think right even if your boss do not think)」:

これらは、イスラエル人で、製造・開発の責任者である元チーフ・プラットフォーム・テクノロジー・オフィサー(Chief Platform Technology Officer)の言葉です。イスラエル人は軍隊出身なので、日本人のように仕事にきっちりとまじめにとりくみます。彼は、低消費電力開発の立役者になりました。

▼「実績を築きなさい。常に単刀直入に。そして集中すること。(Build track record. Be direct. Stay focus. )。」「学びなさい。上司だけではなく同僚や部下からも学ぶところはあります。インテルには素晴らしい才能が結集している。社内外でネットワーキングする機会を最大限活用しなさい。(Be set up to learn. You can learn not only from managers but also from peers/subordinates. Intel has brilliant talent pool. Take the opportunity to network internally/externally)」:

これは、人格者として知られている元チーフ・セールス・オフィサー(Chief Sales Officer)の言葉です。彼は現場からのたたき上げで、人間力で営業トップになりました。誰からも学べるという彼の哲学は、松下幸之助氏のようですね。

▼「技術を学びなさい(Learn Technology)」「メンターを見つけなさい(Find sponsor/mentor)」「リスクを取りなさい(Risk taking)」:

これは、元チーフセキュリティ・オフィサー(Chief Security Officer)の言葉です。

いかがでしょう? 各自いろいろ人によってちがいがありますが、好奇心、学び続ける姿勢、メンター、リスクをとるチャレンジなどは、一貫して共通していることがわかります。これらの価値観からインテルの企業風土も垣間見えるようですね。

次回では、そう言ったインテルでのグローバルリーダーたちとの仕事のやり方を見て得たこと、自分のキャリアや気づきがどう変化したのか、なぜコーチングを始めたのかについて話したいと思います。

IT業界に限らず、現在はスキルや知識はすぐに陳腐化していきます、私の感覚としても、自分の既にある知見やスキルは毎年3割ずつ償却されて、3年ぐらいで価値がなくなるような気がしています。貪欲にあたらしいスキルを学んで、古いスキルは惜しまず捨てること、それがこれからのキャリアに非常に重要です。

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